ライクキッズ

スペシャルインタビュー

「みんな同じゴールじゃなくていい」――AIには真似できない、一人ひとりの過去と現在をつなぎ、その子だけの「色」を輝かせる保育

ライクキッズ株式会社 2021年入社(2026年時点)
熊坂 沙彩さん

「最近はAIが発達して、何でも効率的にできるようになりました。でも、AIには負けていないと思うんです」

そう力強く、かつ柔らかな笑顔で語るのは、にじいろ保育園大泉学園南の熊坂 沙彩(くまさか さや)先生。入社5年目、現在は年長児クラスの担任として、卒園を控えた子どもたちと向き合う日々を送っています。

なぜ、彼女は「AIには負けない」と言い切れるのか。その答えは、彼女が大切にしている「ゴールを全員同じにしない」という保育のあり方と、子どもたちと共に歩んできた4年間の軌跡の中にありました。

ライクキッズ株式会社が掲げる「第二のわが家」というステートメント。それが、単なる安心できる場所というだけでなく、一人ひとりの物語(ヒストリー)を深く理解する人間がいるからこそ成り立つ場所であることを、熊坂先生の実践が教えてくれます。

「スラスラ弾けること」だけが正解じゃない。個性を画一化しない眼差し

集団生活である保育園において、行事や活動には一つの目標が存在します。しかし、熊坂先生は「クラスとして一つのボールを作るとしても、そのボールを全員同じ形にする必要はない」と語ります。

「私が大切にしているのは、一人ひとりの思いに合わせることです。例えば発表会の合奏でも、ピアノをスラスラ弾ける子が正解で、つまずきながら弾く子が間違いということはありません。得意な子もいれば、苦手な子もいる。その中で、スラスラ弾けることだけを『正解』や『ゴール』にしてしまわないように意識しています」

なぜ、そこまで一人ひとりに寄り添えるのでしょうか。それは、熊坂先生が子どもたちの「今」だけでなく、「過去」の姿も含めた流れを共にしてきているからです。

「この子は昔はこれが苦手だったけど、最近興味を持ち始めたな」「去年はこう声をかけたら伸びたな」。そんな一人ひとりの小さな変化の積み重ねを知っているからこそ、その子に合わせた「納得できるゴール」を設定できるのです。

「その子なりの目標を達成できた時に、本人が満足して、一緒に喜ぶことができる。一人ひとりの過去の姿、1年前、2年前の姿が私の記憶に残っているからこそ、それぞれに違う声かけができるんです。その一瞬だけを切り取るのではなく、長い時間をかけて育まれてきた信頼関係と歴史がある。それは、AIにはできない、人間にしかできない仕事だと思っています」

効率性や正解を求めるのではなく、その子の成長のプロセスそのものを大切にする。熊坂先生のまなざしは、子どもたちの個性を輝かせるスポットライトのようです。

2歳から年長へ。オムツ姿から始まった「ともに育つ」4年間

熊坂先生が現在受け持っている年長クラスの子どもたちとは、彼らがまだ2歳だった頃からの付き合いです。

「本当に小さかったんです。2歳の頃は、みんな泣いていて、いわゆるイヤイヤ期の真っ只中。オムツを替えて、ご飯を食べさせて……。そんな時期から毎日一緒に過ごしてきました。それが今では、年長さんとして小さい子のお手本になるくらい立派になって。その姿を見ていると、なんだか私自身が親になったような気持ちになるんです」

4年間という歳月は、子どもたちだけでなく、保護者様との関係も「他人」という枠を超えたものにしていきました。送迎の際の何気ない会話の中に、共に育ててきた「戦友」のような温かさが滲みます。

「保護者様とも、『あの頃はずっと泣いていましたよね』とか、『ご飯も全然食べられなかったのに、今では野菜も食べられるようになりましたね』なんて笑い合えるんです。小さい頃の姿を全部知っているからこそ、お家の方とも深い部分で共感し合える。私にとって保護者様は、一緒に子育てをしてきた『パートナー』のような存在だと感じています」

ライクキッズのステートメントにある「子育てに迷ったら、いつでもなんでも相談できる」関係。「保育園ではこう工夫したら食べられましたよ」「それ、お家でもやってみますね」。そんなやり取りの積み重ねが、保護者様にとっての「実家」のような安心感を生み出しているのです。

「行き渋りゼロ」の奇跡。そこは「大きなお家」のような場所

個性を大切にし、一人ひとりの過去も含めて受け止める熊坂先生のクラスには、ある一つの「結果」が現れています。それは、年長になってから「保育園に行きたくない」と言う「行き渋り」をする子が一人もいないことです。

「もちろん、小さい頃はママと離れるのが寂しくて泣いてしまう子もいました。でも今のクラスの子たちは、朝から『保育園行くぞ!』って張り切って来てくれるんです。誰一人として『行きたくない』と言わない。それは、ここが子どもたちにとって、安心して自分らしくいられる場所になっているからだと思います」

朝起きて、ご飯を食べて、保育園に来て、遊んで、お昼寝して、また遊んで……。子どもたちは起きている時間のあらかたを保育園で過ごします。4年も通えば、先生も友達もみんな顔見知り。熊坂先生は、この園を「大きなお家」のようだと表現します。

「子どもたちにとって、ここはもう一つの家なんだと思います。友達がいて、自分のことをよく知ってくれている先生たちがいて。だからこそ、安心して『ただいま』という感覚で登園してくれる。私たちが目指してきた『第二のわが家』が、子どもたちの姿を通して実現できているのかなと思うと、本当に嬉しいですね」

笑顔があふれる休憩室と、背中を押してくれる園長先生

熊坂先生がこれほどのびのびと、子どもの個性を尊重した保育に向き合えるのは、職場の温かい人間関係があってこそです。にじいろ保育園大泉学園南の職員室や休憩室は、いつも笑い声で賑わっています。

「先生たちはみんな明るくて、感謝の言葉を大切にしています。些細なことでも『ありがとう』と声を掛け合ったり、手が空いていれば『何か手伝うことある?』と自然に助け合ったり。休憩室ではいつも誰かがおしゃべりしていて、本当に仲が良いんです」

そして、そんなチームを支えているのが園長先生の存在です。熊坂先生にとって園長先生は、どんな思いも受け止めてくれる大きな器を持った存在だといいます。

「園長先生は、私の『こうしたい』『ああしたい』という思いを、まずは否定せずに全部受け止めてくれます。私が子どもたちや保護者様のことで悩んで相談に行くと、じっくり話を聞いてくれた上で、『いいんじゃない?』と背中を押してくれるんです。実は相談に行く時点で、私の中で答えが出ていることが多いんですけど(笑)、園長先生に『そうよ、それでいいのよ』と言ってもらえることで、自信を持って前に進めるんです」

園長先生との距離感は「近すぎず遠すぎず、適度な距離」。過干渉するわけではなく、けれど必要な時にはしっかりと支えてくれる。そんな安心感が土台にあるからこそ、熊坂先生は主体性を持って、自分らしい保育を実践できているのです。

「教えることは、学ぶこと」子どもたちに育てられた5年間

インタビューの終盤、熊坂先生は「保育士は子どもと一緒に成長できる仕事」だと語ってくれました。それは単なるきれいごとではなく、日々の葛藤と喜びの中から生まれた実感でした。

「子どもたちは思い通りには動きません。だからこそ、私たちはどう関わればいいか知恵を絞るし、子どもたちの予期せぬ発言や発見にハッとさせられることがたくさんあります。優しい子の姿を見て『私ももっと優しい心を持とう』と反省したり、頑張る姿を見て勇気をもらったり。私自身が、この子たちに育ててもらった5年間だったなと感じています」

特に年長クラスになってからの行事は、毎回が感動の連続だといいます。3歳、4歳の頃の運動会や発表会の姿が走馬灯のように蘇り、立派に成長した今の姿と重なるからです。

「行事が終わった後、子どもたちが自分たちで練習を進められるようになった姿や、クラスとして団結した姿を振り返ると、『大きくなったなぁ』と胸がいっぱいになります。本番では泣きませんけど(笑)、終わった後の安堵感と感動は言葉にできないものがありますね。種まきの時期から知っているからこそ味わえる、保育士ならではの醍醐味です」

これから保育士を目指す人へ

最後に、これから保育士を目指す学生へのメッセージをお願いすると、熊坂先生は少し照れながらも、力強い言葉を紡いでくれました。

「保育士は大変な仕事だと言われることもあります。でも、子どもが好きなら、ぜひ一度はこの世界に飛び込んでみてほしい。たくさんの人と関わり、揉まれる中で、人として大きく成長できる仕事です。何より、子どもたちと共に悩み、共に笑い、共に育ち合う時間は、かけがえのない財産になります」

オムツを替えていた子どもたちが、ランドセルを背負う年齢になる。その成長のすべてを、「親」のような、「パートナー」のような、そして「先生」として見守ることができる幸せ。

熊坂沙彩先生の実践する「みんな同じゴールじゃなくていい」保育は、効率化が進む現代において、私たちが忘れてはならない「人が人を育てること」の温かさと尊さを教えてくれます。

「あなたでよかった、ありがとう」。そんな言葉が、子どもたちからも、保護者様からも、そして先生同士の間でも交わされるこの場所で、熊坂先生は今日も一人ひとりの「色」を輝かせています。

聞き手・執筆:美濃部 哲也(M&I Inc.)

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